カスタマーサクセスのオンボーディングとは?実施手順やポイントを解説

カスタマーサクセスのオンボーディングとは?実施手順やポイントを解説
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SaaSと呼ばれるサブスクリプション型のサービスが広がった近年、カスタマーサクセスの重要性は増しています。カスタマーサクセスの部署を設置する企業も増えてきました。

カスタマーサクセスの中でも、「オンボーディング」と呼ばれる導入初期のサポートが重要なことはご存知でしょうか?

本記事では、カスタマーサクセスにおけるオンボーディングについて、定義や実施手順、参考事例を解説します。

カスタマーサクセスの「オンボーディング」とは

カスタマーサクセスの「オンボーディング」とは、新規顧客がサービスを活用できるようになるまでをサポートするプロセスのことです。オンボーディングを通して顧客が自身の手でサービスを操作できるようになることで、次のアダプションへとつなげることができます。

アダプションとはオンボーディングの次の段階のことで、顧客が本格的にサービスを活用しはじめ、定着化させていくフェーズのことを指します。

サービスを活用してもらい定着を促すためには、初期段階でサービスの価値や効果を感じてもらうことが大切です。そのため、オンボーディングの施策の重要性が高まっているのです。

カスタマーサクセスのオンボーディングの取り組みが重要な理由

カスタマーサクセスではオンボーディングが重要とされていますが、具体的な理由は何なのでしょうか。大きく3つの理由が挙げられます。

導入初期における解約防止につながる

SaaSと呼ばれるサブスクリプション型のサービスが広がったことで、顧客は今まで以上に自由に契約・解約ができるようになりました。SaaSにおいて大切なことは、顧客にサービスを長く利用し続けてもらうことです。

せっかく契約しても上手く使いこなせない状態が続くと、サービスの価値を感じられず初期にチャーン(解約)してしまう可能性が高くなります。

SaaSビジネスで重要なKPIとなることが多いチャーンレート(解約率)を下げるためにも、導入初期から顧客に成功体験を提供し、サービスの価値を体感してもらう必要があります。そうすることで、顧客の定着を促進することにもつながります。

顧客との信頼関係を構築できる

オンボーディングに力を入れることで、顧客との信頼関係の構築につながります。

信頼関係ができると長期的な契約につながり、顧客がサービスに対して感じる愛着や信頼である「顧客ロイヤルティ」、「LTV(顧客生涯価値)」の向上にもつながります。

LTVとは契約・取引している間に顧客から得られる利益のことで、顧客満足度を測るうえで重要な指標のひとつです。サブスクリプション型のSaaSビジネスは、顧客はサービスが気に入らなければすぐに解約することができます。そのため、顧客がどれだけ長くサービスを利用してくれるかが利益に直結すると同時に、顧客満足度を測る指標にもなるのです。

導入初期段階から適切なサポートを提供することで、顧客はストレスなくサービスの利用価値を体感することができ、満足度を高めることができるでしょう。それが顧客とサービスの信頼関係にも良い影響をもたらし、結果的に利益の向上にもつながります。

クロスセル・アップセルの促進効果が見込める

オンボーディングにより顧客満足度が向上すると、クロスセル・アップセルへの促進効果も見込めます。

クロスセルとは、顧客に対して別のサービス・商品もセットで購入してもらえるように提案するセールス手法です。たとえば、スマートフォンを買った際にケースや液晶保護フィルムの購入も提案される場面をイメージすると分かりやすいかもしれません。

アップセルとは、顧客に対して現在利用しているものよりグレードの高いサービス・商品、追加オプションを提案し顧客の単価をアップさせることを目的としたセールス手法です。たとえば、無料会員から有料会員への登録促進などもアップセルのひとつです。

顧客が現在利用中のサービスに満足しており、価値や利便性が伝わっていれば、プランのアップグレードや製品の追加利用を検討する可能性は高まります。

カスタマーサクセスのオンボーディングを実施する手順

続いて、カスタマーサクセスのオンボーディングを実施する手順について解説します。

  1. ゴールを設定する
  2. サービスの利用開始から活用までの流れを洗い出す
  3. 顧客の状況に合わせてサポート手段を決める
  4. KPIを設定する
  5. オンボーディングを実施してPDCAを回す

ひとつずつ詳しく見ていきましょう。

1.ゴールを設定する

まずはゴール設定を行いましょう。オンボーディングのゴールは顧客がサービスを使いこなし自走できる状態になることですが、何ができれば自走と言えるかはサービスの特徴や提供する内容によって異なります。

顧客の現状と課題を分析し、どのような状態になればストレスなく安心してサービスを使いこなせていると言えるのかを明確にするために、ゴール設定をはじめに行いましょう。そうすることで、やるべきことの道筋も立てやすくなります。また、基準となるゴールがあることで効果測定もしやすくなります。

ゴールを設定する際には、定性的なゴールと定量的なゴールの両方を明確にしておくとよいでしょう。

2.サービスの利用開始から活用までの流れを洗い出す

次に、サービス利用開始から活用までの流れを洗い出します。

初期設定を行う必要があるのか、利用開始後にどのような操作があるのかなど、順を追って流れを洗い出し、サービスを使いこなせるようになるまでに必要なサポートを顧客目線で考えましょう。

オンボーディングの目的は、導入初期から顧客に成功体験を提供しサービスを使い続ける価値を感じてもらうことです。流れを整理することで、顧客がつまずきそうなポイントやそれに合わせた適切なサポートを過不足なく検討できるようになります。

3.顧客の状況に合わせてサポート手段を決める

カスタマーサクセスでは、すべての顧客に同じサポートを提供するというわけではありません。セグメントに合わせて適切なサポート手段を決めましょう。具体的には、LTVに合わせて3層に分けて検討するとよいでしょう。その3つのパターンが以下です。

ハイタッチ

LTVが高い顧客に対して行うのが、最も手厚い対応である「ハイタッチ」のサポートです。企業に大きな利益をもたらす顧客層であるため、ある程度のコストをかけて手厚い対応を行います。サービス導入後の個別でのフォローなど、1対1での対応が中心となります。

ロータッチ

中間層の顧客に行うのが「ロータッチ」です。ハイタッチのようにコストをかけるのは難しいものの、ある程度顧客に合わせたサポートが必要となるため、対人とテクノロジーの両方を活用し顧客との接点を作ります。たとえば、コールセンターでの対応やオンラインイベントによるフォローアップなどが挙げられます。

テックタッチ

「テックタッチ」は、LTVが最も低く顧客数が最も多い層へ行うサポートです。コストを抑えて効率良くサポートをするために、テクノロジーを利用した対応が中心となります。具体的には、ヘルプページの設定やメールマガジンの配信などが挙げられます。

4.KPIを設定する

最終ゴールから逆算し、KPIを設定します。KPIとは、ゴールに至るまでの各プロセスでの中間目標です。KPIを設定することで、何に注力すべきかが分かるようになり、一貫性のある施策につながるでしょう。オンボーディングにおけるKPIの例として、以下のような指標があります。

  • 初期設定の完了割合
  • 各機能の利用回数・利用率
  • サービスの利用時間
  • アクティブユーザー数

KPIを明確にしておくと、各フェーズでの効果測定や振り返りにも役立ちます。費用対効果を把握したり改善点を見つけたりできるなど、より効果の高い施策を目指しやすくなるでしょう。

5.オンボーディングを実施してPDCAを回す

ゴールや手段が決まれば、オンボーディングを実施します。ただ実行するだけでなく、定期的に効果の分析を行いながら、より効果の出る施策へのブラッシュアップを行っていきましょう。

いざ実施しはじめてから見つかる課題もあるかもしれません。施策の実施と並行して効果の分析や改善も行っていきましょう。改善点を見つけより良いサポートへ磨き上げるためにも、PDCAを早いスパンで回し続けることが大切です。

カスタマーサクセスのオンボーディング効果を高めるためのポイント

オンボーディングの施策を実施するまでの手順はイメージできましたか?施策の効果を高めるためには、以下の4つのポイントも意識するとよいでしょう。

顧客とのコミュニケーションを欠かさない

オンボーディングの実施中は顧客とのコミュニケーションを欠かさないように意識しましょう。

ハイタッチ層とは直接コミュニケーションを取りながら顧客が求めるサポートをカスタマイズしたり、必要な情報を提供したりすることで信頼関係の構築につながります。

ロータッチ・テックタッチ層の顧客へも定期的なアプローチを欠かさないようにし、いつでもサポートできる入口を広げておくことが大切です。

顧客のセグメントにあったコミュニケーションを行い、そこで拾った顧客の声を生かして改善へつなげられるとよいですね。

営業からの引き継ぎフローを明確にしておく

営業からの引き継ぎフローを明確にし、整備しておくこともカスタマーサクセスのオンボーディング効果を高めるために重要なポイントです。

フローチャートを作成して引き継ぎまでにやるべきことをマニュアル化したり、「引き継ぎシート」を作成して抜け漏れなく情報共有をしたりするのもおすすめです。

営業がヒアリングした顧客の情報や課題、求めているものをスムーズかつ正確に引き継いでおくことで、顧客にとって必要なサポートを提供できる可能性が高くなります。

アーリーサクセスを意識する

サービスの契約を柔軟に検討できるようになった近年、顧客は早い段階での成果を求めています。そのため、どれだけ良いサービスでも、顧客が「使いこなすのが難しい」「効果が無さそう」と初期の段階で感じてしまうと、解約につながる可能性が高くなります。

そのため、短い期間で達成しやすい指標や、顧客がはじめにクリアするべきポイントに力を入れると効果的です。たとえば、初期設定がスムーズにできずになかなか先へ進めないと、顧客は出鼻をくじかれその後のサービス利用に不安を感じるかもしれません。

サービス利用の定着を促すためにも、顧客へ早い段階でサービスを通した成功体験を提供できるようにしましょう。

セグメントごとに適切なツールを活用する

カスタマーサクセスのオンボーディングでは、顧客のセグメントごとにそれぞれ適した対応を行います。対応に合わせて、用いるツールや手段も適したものを活用しましょう。

主にハイタッチ層など大きな額を費やす顧客には、対人や伴走形式で手厚いサポートを用意する必要があります。一方で、LTVが低く母数が最も多いテックタッチ層には、取りこぼしなく効率的にサポートを行うためにも、テクノロジーを駆使してサポートを行うのが適切です。

このように、状況によって効果的なサポートやツールは異なるので、セグメントによって適切な方法を検討するようにしましょう。

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カスタマーサクセスのオンボーディング施策の参考になる事例

最後に、SaaSのオンボーディング施策の事例を3つ紹介します。ユニークな施策もあるので、ぜひ参考にしてみてください。

Slack

ビジネスチャットアプリとして導入する企業が増えているSlack(スラック)。「Slackボット」という機能を通して使い方の案内を行っているのが特徴です。

Slackボットは、新規ユーザーに対して画面上で操作方法を教えるだけでなく、通知をリマインドしたり新しい情報を提供したりする、言わばSlackの「案内人」のようなイメージです。

また、説明書のような長く堅苦しいメッセージではなく、端的でユーモアのある文体でアテンドしてくれる点も、Slackのオンボーディングが成功している理由のひとつかもしれません。

分かりやすさと親しみやすさがある施策を通して、ユーザーの成功体験を提供すると同時にサービス活用のモチベーションアップにもつなげています。

Canva

デザインツールCanva(キャンバ)は、新規登録をする際に利用目的を質問されるようになっています。回答に合わせて案内の内容がカスタマイズされるようになっているのが特徴です。

また、初心者向けの基本的な操作方法や新機能の案内など、さまざまなチュートリアルが用意されています。それぞれ1〜2分程の短い動画なので、必要な操作方法をコンパクトに学べるようになっています。

Canvaにはテックタッチを活用したオンボーディングの仕組みが整っているため、顧客はスムーズに目的に合った利用を開始することができます。

Adobe

数多くのクリエイティブツールを提供しているAdobe(アドビ)。その中にあるデジタルマーケティングツール「Adobe Experience Cloud(AEC)」に対して、「プレミアサポート」というサポートサービスを提供しています。

AECには10種類以上のツールが含まれているため、導入初期から自力で使いこなすのはハードルが高めです。そこで、ハイタッチ層に向けて技術面はもちろん、顧客に合わせたKPIの策定や他社の活用事例の紹介など、徹底的なサポートで顧客の利用定着まで伴走しています。

サービスの特徴や顧客の求めるサポートを理解したうえで実施されている、効果的なオンボーディングの一例と言えるでしょう。

カスタマーサクセスを成功させるにはオンボーディングが重要!

カスタマーサクセスを成功に導くためには、いかにオンボーディング施策に力を入れられるかが鍵となります。サービス導入初期に顧客との信頼関係を築いてこそ、長いお付き合いにつながるのです。

オンボーディングの手順やポイントも解説しましたが、実際に0から施策を考えるためには基礎となるスキルや知識も必要です。

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