「決まったよ。選ばれたのはこれ」
友人から届いたメッセージには、提案した3案のうち、1つのロゴが映っていました。
私が何ヶ月も勉強しながら作った2案ではなく、選ばれたのは、夫がAIを使って、ほんの数分で作った1案。
デザインを学んでいた私にとって、それは忘れられない出来事になりました。悔しくて、情けなくて、「AIにだけは負けたくない」と本気で思いました。
でも今、私はそのAIと毎日一緒にデザインをしています。ライバルだと思っていた相手が、いちばん近くにいる相棒になるまでの話を、書いてみたいと思います。
一生懸命作った2案より、AIの1案が選ばれた
きっかけは、友人からのロゴ制作の依頼でした。
当時の私は、休職をきっかけに、女性向けキャリアスクールSHElikesでデザインを学んでいました。学んだことを試せるチャンスだと張り切って引き受けました。
友人の仕事のイメージや大切にしていることを思い浮かべながら、配色を考え、フォントをいくつも見比べて、線の太さをほんの少しずつ変えては眺める。「こっちのほうが伝わるかな」「いや、やっぱりさっきのほうが」と、何度も作り直しながら、数ヶ月かけて2案を仕上げました。
そこに夫が「AIでも作ってみたら?」と、試しに1案を追加。AIが出したロゴは、あっという間にできあがりました。
正直に言うと、AIが出してきたロゴを見て、自分でも「かっこいい」と思ってしまいました。それでも、きっと、私が作ったほうを選んでもらえるはず。そんな希望を託して、3案を提案しました。
結果は、冒頭のとおりです。
選ばれたのはAIの案でした。
頭が真っ白になりました。私が費やした時間は何だったんだろう。これからデザインを学んでも、AIに勝てないんじゃないか。その日、大人になってひさしぶりに、声を上げて泣きました。
「AIに負けたくない」と頑張るほど、出口が見えなくなった
そこから私は、「AIに負けないデザイナーになる」と決めて、猛勉強を始めました。
SHElikesは、Webデザインやライティングなどの専門スキルをオンラインで学べるスクールです。私はデザイン関連の講義を片っ端から視聴して、課題にも取り組みました。
学ぶこと自体は楽しかったです。でも、心のどこかにずっと引っかかりがありました。
どれだけ練習しても、AIはそれ以上のスピードで進化していく。今日できるようになったことが、明日にはAIでできるようになっているかもしれない。「負けないように」を目標にしている限り、この追いかけっこに終わりはないのでは、と気づいてしまったのです。
それなら、いっそ相手のことをちゃんと知ろう。私はAIのセミナーに参加したり、プロンプトを集めて試したりと、「敵情視察」のつもりでAIに触れ始めました。
敵に頼ってみたら、溶けていた時間が戻ってきた
実際にデザインをしていて、いちばん時間を取られていたのは「素材探し」でした。
イメージに合う素材が見つからなくて、2時間、3時間と探し続ける。あしらいひとつでも、「なんか違う」「これも違う」と迷っているうちに、時間だけが溶けていく。仕事の資料づくりなどで、イメージに合う素材を探し続けた経験がある人なら、覚えのある感覚ではないでしょうか。
ある日、その素材探しをAIに頼んでみました。敵に頼るのは、正直、悔しくもありました。それでも「こういう雰囲気の画像を作ってほしい」と伝えてみると、何時間も迷っていたのが嘘のように、「あ、これがいい」と思えるものがすぐに出てきたのです。
このとき、私の中で何かが切り替わりました。ずっとライバルだと思い込んでいた相手は、使い方しだいで、チームを組んで高め合える存在になるのかもしれない、と。
全部をAIに任せるのではなく、部分的に任せればいい。デザインの軸を考えるのは私。素材づくりのような時間のかかる作業はAI。そうやって役割を分けて考えるようになってから、素材探しや参考探しにかかっていた時間を、短縮できるようになりました。
AIと壁打ちし、プロに聞く。ふたつの視点が私を育ててくれた
今の私には、ふたつの相談先があります。
ひとつはAIです。深夜でもすぐに返事がほしいとき、AIに壁打ちしながら考えを整理します。ツールの使い方を聞くこともあれば、行き詰まったときに「これを見た人はどう感じる?」と尋ねることも。最近よくやるのは、作ったバナーを見せて「このバナーからペルソナを考えて」とお願いすることです。返ってきた答えが自分の狙ったペルソナと合っていれば、デザインの方向性は間違っていないと確認できます。
もうひとつは、人であるプロです。AIと話していても「なんか違う」が解消されないときは、SHElikesのもくもく会でTA(ティーチングアシスタント)さんに質問して、プロとしての意見をもらいます。
AIとだけ会話していたら、たぶん私の目は育たなかったと思います。プロの視点に触れてきたからこそ、クリエイティブを見たときに「これはAIっぽいな」「これは人の手だな」という違いに気づけるようになりました。そこを見る目は、AIではなく、人から学んだものです。
ライバルだと思っていた相手は、相棒に変わった
あのロゴの一件から、私のデザインは確実に変わりました。
悔しさをきっかけに、AIを知り、使い分けを覚え、プロからも学ぶ。その結果、以前よりずっと自分の思いどおりの作品を作れるようになっています。皮肉なことに、私をここまで連れてきてくれたのは、あの日私を負かしたAIでした。
ただ、振り返って思うのは、AIに触れただけでは、この変化は起きなかったということです。プロからフィードバックをもらい、見る目と技術を少しずつ高められる環境があったからこそ、「AIに奪われるかもしれない」という恐怖は、「わたしなら、できる」という自信に変わりました。あの日の怖さの正体は、AIそのものではなく、自分の技術に自信が持てなかったことだったのだと、今なら分かります。
そして今、私には、新しい夢ができました。以前は「Webデザインができるようになりたい」と漠然と思っていた私が、今目指しているのは、Webディレクターというキャリアです。デザインもAIも集客も、それぞれの力を持つ人とチームを組んで、作ったものをお客さまに届け、喜ぶ顔が見えるところまで関わりたい。ロゴでAIに負けて泣いていた頃には、想像もしていなかった目標です。
AIはこれからも進化していきます。でも、それはもう私にとって脅威ではなく、「相棒の性能が上がっていく」という頼もしい話です。
もし今、あなたがAIを怖いと感じているなら、少しだけ考えてみてほしいのです。その怖さの正体は、何でしょうか。もし私と同じように、自分の技術や自信のなさなのだとしたら、それは学ぶことで変えていけます。私は、プロに学べる環境と、隣に座らせたAIのおかげで、変えることができました。
遠ざけるのでも、勝とうとするのでもなく、まず学んでみる。自分の目と技術が育っていけば、AIは怖い相手ではなく、頼れる相棒に変わります。その一歩を踏み出した先の景色は、AIと追いかけっこをしていた頃とは、きっと変わって見えるはずです。
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本記事はSHElikesの受講生を対象とした「SHEライターコンペ」の採用作品です。(執筆者 なっちさん)
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