「わたしらしさ」を取り戻し、形創っていく

「わたしらしさ」を取り戻し、形創っていく

わたしは今、ドイツで洗濯機と戦っている。10種類以上のモード、読めない単語、謎の投入口。そんな洗濯機の前に立っていると、いつしか、ぐるぐると回る洗濯物がわたし自身のように見えてきた。

仕事を辞め、海外に移り、母としての役割だけを握りしめ、でもどこかで「わたしらしさ」の行方が気になっている。

不安と向き合いながら、再び「わたし」を形創り始めた2025年。そんなテーマで過去と未来をつなげてみようと思う。

ドイツの洗濯機と不安

ドイツの洗濯機と不安

わたしが毎日のように格闘しているドイツの洗濯機には、10種類以上のダイヤルが並ぶ。

普段着「Pflegeleicht」、ウール「Wolle」、お急ぎの場合「Schnell」素材や用途によって細かく分かれているらしい。

けれど、まず単語が読めない。

洗剤は「Waschmittel」、柔軟剤は「Weichspüler」。用途別に非常に多くの種類がある。ドラッグストアでは、棚一面に何十種類ものボトルが並び、似たようなデザインに惑わされている。

そして極めつけは、タテ3分割の謎の投入口。説明書を読んでも確信が持てず、だいたい真ん中に入れれば成功だと思っている。

スマホ片手に単語を調べ、操作を確認しながらようやく洗濯機が動き始める。回転槽の中でぐるぐると回る洗濯物。ぼんやりと見ていると、それはわたしの不安のようだった。

ぐるぐる、ぐるぐる、同じ場所でひたすら回る、漠然とした不安。仕事、お金、子育て、将来。みんな抱えたことのある種類の不安なのに、手触りがつかめない。

そんな不安にわたしは囚われている。何が怖いのかわからないまま、胸の中だけで重くなる。そのとき思った。

ドイツの洗濯機も不安も同じだ、まず調べなくては動かない。モードの意味がわからないままダイヤルを回しても、洗濯物はきれいにならない。

そして、不安の正体を知らないまま心の中で回し続けても、いつか溢れるだけだ。洗濯機との戦いは、わたしの心の状態そのものを映している気がした。

生活と役割の急変

2024年の今頃は日本で働き、子どもたちを保育園に送り迎えし、日本製の洗濯機を迷いなく操作し、慌ただしく生活していた。

けれど2025年、家族でドイツに移住し、わたしは仕事を辞め、キャリアを中断した。生活は大きく変わり、24時間フルタイムの母になった。そしてドイツ製洗濯機と向き合い、スマホを駆使して単語を解読している。

厚生労働省の調査では、女性の離職率は20代後半〜30代前半で高く、育児や家庭の事情が理由に挙げられる。

わたしもそのひとつのケースに入ったのだと思う。役割は母ひとつに収束したはずなのに、なぜか心は軽くならなかった。

むしろ「わたしらしさ」をどこかに置いてきた気さえしていた。ドイツの洗濯機の操作に悩むたび、

「今のわたしもこんなふうに、道順を見失っているのかもしれない」

そんな考えが頭をよぎった。

海外生活であらわになった不安の正体

海外生活は驚くほど「わからない」の連続だ。言葉の壁、文化の違い、頼れる人がいない。日常の小さなつまづきが積み重なると、自信は簡単に揺らぐ。「わたし、こんなに何もできない人だったっけ?」と。

でも、ふと思う。わたしの胸に居座っていた「漠然とした不安」は、ここに来てから急に生まれたものではない。

海外生活であらわになった不安の正体

20代後半、仕事に慣れ、任されることが増えた頃。職場では社会人として、家庭では妻や母として。必死に役割をこなしていたけれど、どこかで少しずつ「本当のわたし」が薄れていった。

その頃から、徐々に漠然とした焦燥感や不安感が募ってきていたように思う。周りと比べては落ち込み、好きだったことに手を伸ばす余裕もなく、気持ちの浮き沈みを日々感じていた。

仕事やお金といった「現実的な不安」とは別にある「漠然とした不安」。好きなことや大切にしたいことより、やるべきことを優先しつづけてきた。

忙しさの中で、自分の好きなことは後回しにし続けてきた。衣替えで大切な服を入れ替えるかのように、いつか取り出すつもりで、クローゼットに仕舞い込んでいた。

では、わたしの大切な服を着る季節はいつ来るのだろう。それは自分で決めなければ永遠に来ないのではないか。不安の正体は、わたしらしさの喪失だったのかもしれない。

そう思うと胸にストンと落ちるものがあった。

SHElikesとの出会い

まずは仕事やお金への不安を少しでも軽くしたくて、オンラインで学べるスクールをいくつか調べた。

その中で、SHElikesの「わたしらしく働く」というキャッチコピーに心が惹かれた。海外にいても、育児中でも、自分のペースで学べる。Webライティングの受講で、文章が好きだったこと、言葉に触れるのが好きだったことを、久しぶりに思い出した。

本を読むこと、広告を眺めること、映画の中の好きな言葉を覚えること。忘れていた「わたしらしさ」が芽吹いた気がした。

SHElikesではWebライティングのほか、デザインやマーケティングなど幅広く学べる。“好き”を模索しているわたしに、ぴったりの環境だった。

自己実現の大切さ「わたしらしさ」とは何か?

さらに魅力的だったのは、受講生たちのコミュニティだ。そこにいる人たちは、みんな「好き」を言葉にするプロだった。

わたしは旅行が好き。わたしは美味しいものが好き。わたしは笑顔が好き。そこでは、自分の好きを声に出して伝えることができる。未来を話せる場所があることが、こんなにも心を支え、安心できるのだと知った。

自己実現の大切さ「わたしらしさ」とは何か?

2か月ほど受講を続けたころ、不安より「やってみたい」という気持ちのほうが強くなっていた。

好きなことを思い出してから、旅行に行きたくなり、料理が楽しくなり、写真を撮る回数が増えた。わたしらしさが日常に少しずつ戻ってくる感覚があった。

不安に囚われていたはずが、気づけば前を向いていた。

「わたしは、いまの役割だけでできているんじゃない」

過去のわたしに伝えたい言葉が、ようやく浮かんだ。

2025年のおわりに思うこと

SHElikesで学びながら、わたしは「わたし」を取り戻し、形創る作業を続けている。洗濯機の前で不安に立ちすくむより、「調べて・理解して・やってみる」を選ぶほうが、未来は動き出す。

不安をなくすことはできない。けれど、不安の正体を調べ、理解し、扱い方を知ることはできる。操作方法のわからない洗濯機を動かすように、わたしの未来も、まずは小さな一歩からだ。

クローゼットの奥で眠っていた「わたしらしさ」を取り出し、大切な服を着て、好きな場所へ行き、美味しいものを笑顔で食べよう。これからの「わたし」は、どんな形になるのか、どんなふうに彩れるのか。

答えはわからないけど、その余白がいまは楽しみだと思える。漠然とした不安を取り去るには、まず「わたしらしさ」を見つめること。

わたしの2025年は、「わたし」を取り戻し、もう一度形創っていく1年になった。

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本記事はSHElikesの受講生を対象とした「SHEライターコンペ」の採用作品です。(執筆者 ayaさん)

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※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。