起業する際に自己資金なしでも融資は受けられる?利用できる制度や注意点を解説

起業する際に自己資金なしでも融資は受けられる?利用できる制度や注意点を解説
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ライター SanamiSasaki
フリーライター|新卒で金融業に従事し、出産後未経験で地元のメディアを運営する会社に転職。現在は推し活と育児を両立しながら、さまざまなWebメディアで執筆しています。
エディター 工藤 梨央
監修者 板山 翔
平成28年に日本初のオンライン専門の税理士事務所を開業。塾講師歴7年、大手WEBメディアで連載を持つなどの異色の経歴を持つ。5人以下の小さな会社の経営者へ向けて、様々なメディアで情報を発信しており、YouTubeチャンネル「税理士ショウの超わかりやすいビジネスQ&A」は動画9本で登録者1,000人を超えるなど急成長している。

起業する際に課題になるのは、資金繰りです。起業前にある程度の自己資金を用意しておき、不足分を融資でまかなうのが一般的な流れ。しかし、中には「起業したいけどお金がない」という人もいるでしょう。「今起業しないとチャンスを逃してしまう」といったケースもあるかもしれません。

そこで今回は、自己資金ゼロでも創業融資を受け起業する方法について解説していきます。活用できる融資制度のほか、融資を受けるときのポイントや注意点も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

自己資金なしで起業したい場合でも融資を受けることはできる?

自己資金なしで融資を受ける方法はゼロではありませんが、難易度は高くなります。起業には一定額の資金が必要となるため、自己資金があるに越したことはないでしょう。まずは、自己資金の必要額や自己資金に該当するお金について確認していきます。

必要な自己資金の額は事業や制度によって異なる

必要な自己資金の額はビジネスモデルや利用する制度により異なるため、自己資金がいくらあればよいと一概には言えません。日本政策金融公庫総合研究所の「新規開業実態調査」によると、起業にかかった合計額の平均は1,177万円。そのうち金融機関の借入が68%、自己資金が24%となっており、金額にすると271万円ほど用意したという結果になっています。*1

起業にかかる費用のうち少なくとも20%は貯めておいた方がよいでしょう。

自己資金に該当するお金の例

金融機関から創業融資を受けるにあたって、自己資金がないと思っていても、資産によっては自己資金と認められるものがあるかもしれません。自己資金に該当するお金には以下のようなものが挙げられます。

  • 預貯金…もともと自分で貯めていたお金
  • 退職金…起業するにあたり退職したときに受け取ったお金
  • 相続金…遺産相続などで得たお金
  • 生命保険の解約金…生命保険解約により得たお金
  • 不動産や持ち物を売却したお金…価値のあるものを売却し得たお金
  • みなし自己資金…起業するためにすでに支払っているお金

自己資金と認められるか否かは、出所が証明できるかどうかという点です。手元にあるお金であっても、ほかの金融機関からの借入や誰かから借りたお金、タンス預金は自己資金としては認められません。

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起業する際に利用できる融資制度

資金がない状態で起業するなら、融資制度の活用を検討しましょう。起業するときに利用できる融資制度には以下のようなものがあります。

実績がない状態では審査が厳しくなり、民間の金融機関では融資が受けられない可能性があります。そんなときに頼りになるのが、日本政策金融公庫などの公的金融機関。自己資金以上に創業計画を重視するという特徴があります。それ以外には地方自治体独自の融資制度を活用する方法もあるでしょう。それぞれ解説していきます。

新創業融資制度

新創業融資制度を利用すれば、無担保かつ無保証で融資が受けられます。日本政策金融公庫が創業者をサポートするために始めた制度で、第三者が保証人となり代表者が保証人にならなくてもよいため、創業者が負うリスクが軽減されるのが特徴です。担保や保証人なしで利用できるにも関わらず、融資限度額は3,000万円と大きな融資を受けることもできます。民間の金融機関と比べると金利が低く、申込から融資まで1ヶ月ほどとスピーディーなのもポイントです。

なお、新創業融資制度を利用できるのは、以下の要件をどちらも満たす人。

  • これから起業する、もしくは事業開始後税務申告2期を終えていない
  • 創業にかかる総資金のうち1/10の自己資金を確認できる

創業にかかる総資金が1,000万円の場合、100万円以上の自己資金を用意できなくてはなりません。資金の出どころを提示できなければ自己資金として認められないので注意しましょう。

また、新創業融資制度は単独では申し込みできません。上記で紹介したほかの融資制度と組み合わせて利用する必要があります。

新規開業資金

新規開業資金は、これから起業する人や事業開始7年以内の人を対象にした融資制度です。担保や保証人は原則必要となっていること、新規開業資金制度を単体で使えることが、新創業融資制度との違いです。

新規開業資金の申し込みには以下のような条件があり、いずれかに当てはまる場合に利用できます。

  • 雇用の創出を伴う事業を予定している
  • 現在勤めている企業と同じ業種の事業
  • 産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を行う
  • 民間金融機関と日本政策金融公庫による協調融資を受ける

また、新規開業資金には自己資金額の条件がありません。事業計画や状況により必要額が異なるため、自己資金がない場合はまず相談してみるとよいでしょう。

挑戦支援資本強化特例制度(資本制ローン)

挑戦支援資本強化特例制度は、ベンチャー企業やスタートアップ企業などを対象にした融資制度です。大きな特徴は資本性ローンという点。負債ではなく資本扱いになるため、ほかの金融機関での融資審査で有利になる可能性があります。資金調達をスムーズにしたいなら、こちらを利用するのもよいでしょう。

挑戦支援資本強化特例制度に申し込みする場合、以下の要件をすべて満たす必要があります。

  • 市場の創出や開拓を目指す
  • 事業計画を策定したうえで認定経営革新等支援機関からの指導や助言を受けている

自己資金の条件はなく、要件に当てはまっていれば申し込みができます。後述する中小企業経営力強化資金との併用も可能です。

女性、若者/シニア起業家支援関連

女性や若者、シニアの起業を対象にした女性、若者/シニア起業家支援資金もあります。利用できるのは、以下の条件に当てはまる人です。

  • 新たに起業する、もしくは事業を始めて7年以内
  • 女性、もしくは35歳未満か55歳以上

男性の場合は年齢の条件が定められていますが、女性の場合は年齢の条件は定められていません。また、自己資金の要件は定められていないのもポイントです。新規開業資金よりも金利が低いため、条件に該当するなら女性、若者/シニア起業家支援資金で申し込みする方がよいでしょう。

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中小企業経営力強化関連

中小企業経営力強化資金は、認定支援機関の指導や助言を受けることを条件にした融資制度です。対象となるのは以下の全ての要件に当てはまる人です。

  • 地域経済の活性化につながる事業
  • 税務申告を1期以上行っている場合、所得税等を完納している

自己資金の条件はなく、要件に当てはまっていれば申し込みができます。ただし、無担保の制度ではないことに加え、融資を受けたあとに年1回以上報告することが義務づけられることも理解しておきましょう。

都道府県や市町村の融資制度

起業予定の自治体の制度融資を活用する方法もあります。金利が低い、補助金や助成金の交付が受けられる、税制面の優遇があるなど、支援内容はさまざま。住んでいる自治体によっては融資制度がないこともあります。また、要件にも違いがあるため、自治体に確認してみるとよいでしょう。

自治体が直接融資するわけではなく、地方自治体を中心として、信用保証協会と民間の金融機関が連携して融資が行われます。たとえば、東京都には中小企業制度「創業」という起業に特化した制度があります。利用の条件に自己資金についての項目はなく、自己資金に自信がなくても利用できる可能性もあるでしょう。

起業する際に融資を受けやすくするためのポイント

起業する際に融資を受けやすくするには、以下のようなポイントを押さえる必要があります。

それぞれ解説していきます。

可能な限り自己資金を貯める

自己資金なしでも起業できますが、厳しい面も多々あるでしょう。融資を受けると毎月の返済も発生し、固定費がかかります。事業を軌道に乗せるまでに時間がかかると、返済が辛くなる可能性も。自己資金を地道に貯めてから融資を受けるのもひとつの方法です。

自己資金をきちんと貯めることは、起業に向けた計画性の高さをアピールすることにもつながります。可能な限り自己資金を貯めておくと融資が受けやすくなり、スタートダッシュが切りやすくなるでしょう。

抜け漏れなく創業計画を立てる

融資を受けるためには、創業計画をしっかり立てることが大切です。融資の申し込みの際には、計画書を提出しなければなりません。抜け漏れがあると審査に影響を及ぼすため、自己資金がない状態で融資を受けるなら、緻密な計画が必要になるでしょう。思い描くビジネスプランを数字に落とし込み、創業計画書をブラッシュアップしておくことが大切です。

自己資金がない状態で融資を希望すると、希望通りに融資が受けられるとも限りません。融資額を頼りにした計画では、創業段階で頓挫してしまう可能性も。いくつかのパターンを想定して計画しておくとよいでしょう。

創業前の実績をアピールする

創業前の実績をアピールすることも重要です。通常の融資の場合、決算書などをもとに判断しますが、起業の場合は実績を図る材料がありません。そのため、代表者の経験もチェック項目のひとつになります。

起業する事業の内容にかかわる経験を何年くらいしているのか、どう携わってきたのかをきちんと提示する必要があるでしょう。創業前の実績をしっかりアピールできるかどうかも、融資が受けられるかどうかのポイントになります。

起業に必要な自己資金を増やす方法

自己資金を増やす時間がないという場合は、以下のようにして自己資金を増やす方法もあります。

それぞれ詳しく解説します。

みなし自己資金を申告する

みなし自己資金も自己資金に該当します。みなし自己資金は、起業の準備のために既に使っているお金のこと。設備投資など、事前に使っているお金があればみなし自己資金として申請することで、自己資金額を増やせるでしょう。ただし、交通費や交際費、広告費など形が残らない費用の場合、申請してもみなし自己資金と判断されない可能性もあります。

資産を売却する

所有している資産を売却して自己資金にする方法もあります。財産として認められるのは、不動産や有価証券、自動車、パソコンといったもの。不動産の場合は売却から入金までに時間がかかるため、計画的に準備する必要があるでしょう。なお、資産の売却で得たお金を自己資金に充てる場合、売却時の契約書や領収書の保管が必要になります。

保険を解約する

積立型の保険を契約しているなら、解約して返戻金を受け取る方法もあります。契約期間によってはまとまった金額が受け取れるかもしれません。ただし、解約のタイミングによっては元本割れになり損をする可能性もあるため、解約前にきちんと検討する必要があるでしょう。また、解約するほか、契約者貸付制度を利用して解約せずに一定額のお金を受け取る方法もあります。

家族や親戚から贈与を受ける

借入金の場合は自己資金と認められませんが、贈与を受けたお金であれば自己資金として認められます。家族や親戚から贈与を受けるのも、自己資金を増やす方法のひとつです。その場合、出所をはっきりさせるために贈与契約書を作成しておく必要があります。また、年間110万円を超える贈与には贈与税がかかる点にも注意が必要です。

別の経営者からサポートを受ける

共同経営者がいる場合、相手の資金も自己資金に含まれます。共同経営者になってもらい資金援助してもらうのもひとつの方法です。共同経営者にお金を借りる形になるため、起業して利益が出るようになれば少しずつ返済していく必要があります。援助額や日付などを書類として残し、トラブルを防止する必要があるでしょう。

クラウドファンディングを活用する

クラウドファンディングで出資者を募る方法もあります。クラウドファンディングとは、インターネットで不特定多数から資金を募る方法のこと。クラウドファンディングサイトに事業内容や目的を掲載し、支援を募ります。出資してもらうためには、事業の魅力を感じてもらえるかどうかが重要です。

副業を始めてお金を貯める

自己資金が多いほど融資を受けやすくなりますが、会社勤めの場合大きく収入を増やすのは難しいでしょう。本業だけではなかなかお金が貯められないという場合は、副業を検討するのもおすすめです。仕事に差し支えないよう注意を払う必要はありますが、本業以外に収入があればお金も貯めやすくなります。資金を貯めて起業することで、リスクを抑えることにもつながるでしょう。

自己資金が少ない場合に融資を申し込む際の注意点

自己資金が少ない状態で融資を申し込む場合、以下のような注意点があることを知っておきましょう。

  • 融資額が低くなり、金利が高くなる可能性がある
  • 「見せ金」や「預け合い」は違法となる

詳しくチェックしていきましょう。

融資額が低くなり、金利が高くなる可能性がある

自己資金なしでも融資を受けられる可能性はありますが、基本的に融資額は自己資金額によって変動します。希望通りの融資額にならないこともあるでしょう。また、金利は融資額や返済期間によって変動するため、自己資金がないと上限金利に設定され金利負担が高くなる可能性もあります。融資額や金利への影響も理解しておく必要があるでしょう。

「見せ金」や「預け合い」は違法となる

「見せ金」や「預け合い」は違法行為となり、今後融資を受けられなくなる可能性があります。「見せ金」は知り合いなどから一時的にお金を借りて資金を作り、起業したあとすぐに返済することです。自己資金があるように見せかけたお金ということで、見せ金と称されます。資金の出どころや流れを提示しなければならないため、見せ金は通用しないと理解しておきましょう。

「預け合い」も「見せ金」と似ている手段ですが、違いは金融機関と共謀して行う点。金融機関から個人で借りたお金を出資金の払い込み口座に入金しますが、返済が完了するまで出資金の引き出しはできません。事業に使用できるお金ではないため、見せ金と同じく違法行為です。頭金が多いと信頼が得やすくなりますが、やってはいけないこととして理解しておきましょう。

自己資金なしで起業できるがデメリットもある

今回は自己資金なしで融資を受ける方法について解説しました。日本政策金融公庫などを利用して資金調達すれば自己資金なしでも起業は可能です。しかし、思うような金額を融資してもらえない、金利が高くて運営資金に影響が出るなどのデメリットがあるため、自己資金はあるに越したことはありません。

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※出典
*1:2022年度新規開業実体調査~アンケート結果の概要~

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。