マーケティングのセグメンテーションとは、市場を細分化し、特定の顧客グループに分けることです。適切なターゲットを選び、効果的なマーケティング戦略を立てるための重要なプロセスです。
今回はマーケティングのセグメンテーションについて、ターゲティングやポジショニングとの違いや4つの原則、詳しいやり方を紹介します。セグメンテーションを生かして成功した企業事例も解説しますので参考にしてください。
マーケティングにおけるセグメンテーションとは?
マーケティングのセグメンテーションは、自社製品やサービスの対象市場を細かく分けることです。特定のニーズや特性を持つ顧客グループに対して、効果的なマーケティング施策を実行するのに役立ちます。
セグメンテーションを行う目的は、限られたリソースを最大限に活用し、効率的にターゲットにアプローチすることです。セグメンテーションを使うと、自社の製品やサービスがどの顧客層に最も適しているかを明らかにできます。
ターゲティングとの違い
ターゲティングとは、セグメンテーションで特定したグループの中から自社の製品やサービスに合う顧客層を「選ぶ」ことです。
ターゲティングではどのグループが最も利益をもたらす可能性があるか、または自社の強みを最も生かせるかを考えながら顧客層を選択します。
たとえば、健康食品を販売する会社の場合を考えてみましょう。セグメンテーションで「健康に関心が高い人」「ダイエットを考えている人」「スポーツをする人」など、さまざまなグループに市場を分類します。その後、ターゲティングで最も効果的なアプローチを期待できるグループ、たとえば「ダイエットを考えている20代から30代の女性」を選択可能です。
ポジショニングとの違い
ポジショニングとは、市場内で自社の製品やサービスがどの位置にあるべきかを「決める」ことです。
ポジショニングでは、セグメンテーションで特定した顧客グループの中で自社の提供する価値をどのように差別化し、競合と比較してどのような優位性を持たせるかを考えます。
たとえば、あるカフェが新しいコーヒー製品を開発する場合で考えてみましょう。セグメンテーションでは「コーヒーが好きな人」「忙しいビジネスパーソン」「学生」など、異なる顧客グループを特定します。その後、ポジショニングでは「忙しいビジネスパーソン向けに、高品質で迅速に提供されるコーヒー」といった具体的な市場の位置づけを決定可能です。
セグメンテーションを考えるのに役立つSTP分析
STP分析はターゲット市場を明確にし、効果的なマーケティング戦略を立てるためのフレームワークです。
具体的にSTP分析では、次のステップで分析に取り組みます。
- 市場を細分化する(セグメンテーション)
- 目標顧客を選定する(ターゲティング)
- 製品の立ち位置を決める(ポジショニング)
市場内でセグメンテーションを考える際にはSTP分析を活用することで、市場内で自社製品・サービスの最適な顧客層と効果的な訴求方法を明らかにできます。
セグメンテーションの原則4Rとは?
マーケティングにおけるセグメンテーションを評価する際には、4Rの原則が役立ちます。
4Rの原則とは、以下の指標を参考にセグメントを評価する方法です。4Rの原則を活用することで、自社に最も良いターゲットを選択できます。
それぞれの項目を解説します。
市場規模(Realistic)
市場規模(Realistic)とは、セグメントが実際に十分な売上と利益を生み出せるかを確かめることです。対象のセグメントが十分な市場規模を持っているか、将来的に成長する見込みがあるかを確認することで、収益を生む可能性を判断します。
優先順位(Rank)
優先順位(Rank)とは、セグメントの価値を評価し優先順位に応じて整理することで、最も効果的なリソース配分を決定することです。
優先順位をつける際には、市場の規模を把握しましょう。大きな市場はセグメントが成長できる機会が多くありますが、小さくても成長が可能な場合があります。市場が将来的にどれだけ拡大するか、競合が少なく自社が優位に立てるかなどを考えながら順位をつけましょう。
到達可能性(Reach)
Reach(到達可能性)とは、セグメントに対して自社の製品・サービスやプロモーションメッセージを効果的に届けられるかを確かめることです。
到達可能性を判断するには、顧客に物理的に商品を届けるための配送・物流手段、 顧客とのコミュニケーション方法、対象地域の文化や言語の壁などを確認しましょう。
反応の測定可能性(Response)
Response(測定可能性)は、セグメントの特徴や市場の規模、マーケティング施策後の顧客の反応を正確に測定できるかどうかを確認することです。
反応の測定可能性を判断するには、セグメントの市場規模を具体的に把握できるか、セグメント内の顧客の購買力を測定できるかを把握します。また、施策実施後の顧客の反応(購入率、反応率など)を正確に追跡できるかも確かめましょう。
セグメンテーションのやり方
セグメンテーションを行うときは、4つの変数を使用して進めるのが一般的です。セグメンテーションのやり方として、確認したい4つの変数は以下の通りです。
4つの変数を理解し、それに基づいたマーケティング戦略を立てることで、消費者のニーズに合った製品やサービスを提供できます。
地理的変数
地理的変数とは、国や地域、都市などの地理的な要素に基づく変数です。地理的変数には、以下の要素があります。
- 国や地域市町村
- 都市の規模
- 人口密度
- 気候
- 文化や生活習慣
- 宗教
たとえば、北海道と沖縄県では気候や文化の違いから、生活習慣やサービスの好みが異なります。北海道では防寒製品やウィンタースポーツが、沖縄ではマリンスポーツやエコツーリズムが人気です。地理的特性を踏まえた製品やサービス提供により、地域に合ったニーズに応えられます。
人口動態変数
人口動態変数とは、消費者の人口統計に関連する変数です。人口動態変数には、以下の要素があります。
- 性別
- 年齢
- 家族構成
- 職業
- 収入
たとえば、若年層と高齢者では消費行動や好みが異なります。若年層は最新のテクノロジーやファッションに関心が高い一方、高齢者は健康関連商品や使い方が簡単で理解しやすい製品やサービスを重視する傾向があります。人口動態変数は、消費者の選択やニーズに直結しているため、マーケティング戦略においてとても重要です。
心理的変数
心理的変数とは、消費者の内面に焦点を当てた変数のことです。インターネットの普及により、心理的変数をより正確に収集できるようになりました。心理的変数には、以下の要素があります。
- 価値観
- 趣味
- ライフスタイル
- 性格
- 社会階層
心理的変数を活用すれば会員へのおすすめ商品を表示するときに、健康を重視する人にはフィットネスの会員権やヘルシーフードを、環境保護を大切にする人にはエコな製品やリサイクルできる商品を提案できます。心理的変数を集めて理解することで、消費者の内面を把握し、それぞれに合った商品やサービスを提供可能です。
行動変数
行動変数とは、消費者の購買行動や利用パターンなど行動に関連する変数です。SNSやオンラインショッピングの普及により、行動変数の収集と分析がしやすくなっています。行動変数には、以下の要素があります。
- 購入のタイミング
- 態度
- 購入経路
- 購入頻度
- 顧客が追求するベネフィット
たとえば、夜間に購入する顧客と昼間に購入する顧客では、配信されるメッセージや広告の配信時間を変えることで、より効果的なアプローチが可能です。行動変数を利用することで、より細かく、個々の消費者のニーズに合ったマーケティング戦略を立てられます。
セグメンテーションを生かしたマーケティング施策例
セグメンテーションを行うことで、市場の新たなニーズに応えたり企業が独自の商品を開発したりするのに役立ちます。以下の企業におけるセグメンテーションを生かしたマーケティング施策例を紹介します。
ユニクロ(BtoC)
ユニクロは、独自のSPA(製造小売)システムを駆使して、市場の需要に応える製品開発と効率的な大量生産を実現しています。従来のアパレル業界が顧客層に焦点を当てたセグメンテーションを行ってきた中で、ユニクロは製品特性に基づく分類を行ったことで成功しました。
具体的には、「カジュアルかフォーマルか」と「トレンドかベーシックか」という二つのシンプルな指標に基づいて製品をセグメント化しました。この戦略により、「カジュアルでベーシックな商品を作る」という明確な方針を確立し、市場における独自の位置づけを固めたのです。
特にユニクロが打ち出したフリース製品は、セグメンテーション戦略の成功例です。幅広い顧客層に受け入れられ、一時期は在庫がなくなるほどの人気ぶりでした。ユニクロの成功は、市場ニーズを正確に捉え、そのニーズに応える商品を提供した結果と言えます。
JINS(BtoC)
JINSは、メガネ市場の既存の枠組みを超えて、新しい顧客層を開拓しました。JINSの成功は、顧客のニーズに合わせた製品の提供だけでなく、新しいニーズを創出したことにあります。
従来のメガネ市場は、視力矯正を必要とする人々を主なターゲットとしていました。一方で、JINSは「視力が良い人」や「目の疲れを感じる人」に焦点を当てることで、新たなセグメントを切り開いたのです。
それが、ブルーライトカットメガネ「JINS PC」の開発です。JINS PCは、パソコンやスマートフォンの長時間使用による目の疲れを軽減することを目的としています。
ブルーライトカットメガネは、目の健康を重視する現代人にとって欠かせないアイテムとなり、視力矯正が必要ない人も含めた広い顧客層を獲得しました。JINSは、JINS PCの開発により、メガネの需要を拡大し、市場に新しいトレンドを創出しています。
パナソニック(BtoB)
パナソニックは、セグメンテーションを通じて、特定のニーズに対応する製品を提供することで、ビジネスシーンでのニーズに応えました。それが、ノートパソコン「レッツノート」の誕生です。
従来のノートPC市場は一般的なビジネスユーザー向けでしたが、パナソニックは「外回りの多い営業職」という特定のセグメントに焦点を当て、新たな市場ニーズを見出しました。
その結果、軽量で長時間バッテリー駆動のノートPC「レッツノート」を開発し、長時間の外出や移動を伴う営業職のニーズに応じた設計を行いました。レッツノートは、「ビジネスシーンでの使用に最適化されたノートPC」として独自の位置づけを確立し、国内モバイルPC市場でのシェアを大幅に拡大しました。
マーケティングのセグメンテーションを学ぼう
今回は、マーケティングにおけるセグメンテーションについて、類似用語との違いや詳しいやり方などを紹介しました。
セグメンテーションは、自社商品の対象となる市場を細かく分けることで、マーケティング施策を考えるうえで土台となる重要な作業です。STP分析や4Rの原則、4つの変数による分類分けを活用しながら施策に生かしてみてください。
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