デザインを学んだりデザイナーを目指したりする際に、「DTP」という言葉を見かけることも多いでしょう。しかし、実際にはDTPが何を意味するのか、どのような仕事であるのかを理解している人は多くないかもしれません。
今回は、そんなDTPについて、意味やWebデザインとの違い、DTPの仕事に必要なスキルや知識、関連資格や向いている人の特徴について、わかりやすく解説します。
DTPとは
DTPとは、「Desktop Publishing(デスクトップ パブリッシング)」の略であり、パソコン上で印刷物をデザイン・制作することを意味します。日本語では「卓上出版」や「机上出版」とも呼ばれており、従来ではアナログで行っていた作業をパソコンで行うことによって、短時間で効率良く印刷物のデザインができるようになりました。
わかりやすくまとめると、雑誌やパンフレットといった紙媒体の原稿作成、デザイン、レイアウトなどの全ての工程をパソコン上で行うことをDTPと言います。
DTPデザインとWebデザインの違い
Webデザインとは、WebサイトやWeb上の広告(バナーなど)といった、Web上に表示されるページの見た目をデザインすることです。
クライアントの目的に沿ってデザインするという点においてはどちらも同じですが、DTPデザインとWebデザインでは、色の表現方法や動画の有無、サイズの限度の有無などが異なります。
また、DTPデザインは一度印刷してしまうと修正が不可能ですが、Webデザインであればいつでも修正・追記が可能です。最終的に紙に印刷して完成か、Web上で完成かという違いから、使用するソフトや求められるスキルがそれぞれ異なるとも言えるでしょう。
DTPの職種と仕事内容
DTPの仕事には、主に「DTPデザイナー」と「DTPオペレーター」の2つがあります。DTPを行う企業では、各職種を採用して分業している場合もあれば、2つの職種の担当領域を兼任する場合もあるでしょう。
ここでは、それぞれの仕事内容について解説します。
DTPデザイナー
DTPデザイナーは、DTPツールを使用して印刷物の写真・イラスト・文章などをレイアウトし、デザインする仕事です。クライアントの目的や要望を汲み取るために打ち合わせを行ったり、アートディレクターがいる企業の場合は連携を図りながら企画書をもとにデザインを組み上げていったりします。
Web上で表示されるものと紙に印刷されるものでは、紙の質やインクの色味、紙のサイズによって変化する部分も多いため、常に完成形を想像しながら細かい調整を行うスキルが必要です。媒体によって、ユーザーの心理や伝えるべき内容を意識したデザインを行います。
DTPオペレーター
DTPオペレーターは、DTPデザイナーが制作したデザイン原案をもとに印刷データの修正や加工を行い、実際に印刷ができる段階まで仕上げる仕事です。フォーマット通りのデザインになるようにひな形を作成したり、文章の校正・修正をしたり、レイアウトの最終調整を行ったりします。
DTPデザイナーと分業している場合、DTPオペレーターは基本的にデザイン作業を行いません。そのため、将来的にデザインをしたいと考えている人は、どちらも兼任できるようにクリエイターとしての創造力や技術スキルを徐々に磨いていくとよいでしょう。
DTPの仕事に必要なスキルや知識
DTPデザイナーやDTPオペレーターを目指す際には、以下のスキルや知識が必要です。
それぞれ解説するので、DTPの仕事に興味がある人は学習の参考にしてみてください。
デザインの知識
DTPの仕事には、基礎的なデザインの知識が求められます。デザインはただセンスだけを頼りに行うのではなく、一定のルールを理解したうえで適切にメッセージを伝える必要があるためです。
たとえば、各要素の大きさや空間のバランス・視線誘導といったレイアウトデザインの原理、文章の見栄えを良くするタイポグラフィ、色が与える影響や相互作用といった色彩理論などは、デザインの基礎知識としてはじめに習得しておきましょう。
印刷やデータの扱いに関する知識
DTPの仕事では、Webデザイナーとは異なるスキルとして、印刷やデータの扱いに関する知識が必要です。DTPの仕事において、完成形は紙に印刷されたものであり、データ上のデザインではありません。そのため、印刷紙の種類やインクの写り方などの印刷に関する知識を身につけることが大切です。
また、DTPオペレーターはDTPデザイナーから送られる原稿データをもとに修正・加工を行うため、データの扱いに関する知識も習得しておく必要があります。
アプリケーションの操作スキル
DTPの仕事では、さまざまなアプリケーションを使用してデザインを行います。DTPデザイナーとDTPオペレーターのどちらも必須となるスキルのため、各アプリケーションの基本操作は習得しておきましょう。
DTPで使用されるアプリケーションとして、代表例をそれぞれ紹介します。
Adobe InDesign
Adobe InDesign(アドビインデザイン)は、Adobe社が提供しているDTPアプリの代表例であり、複数ページのレイアウト作成に向いています。数十ページにわたってレイアウトデザインを統一したり、まとめて書き出しを行ったりできるため、雑誌や書籍、パンフレットなどを制作する場合にはおすすめのアプリケーションです。
Adobe Illustrator
Adobe Illustrator(アドビイラストレーター)は、同じくAdobe社が提供しているグラフィックデザインツールです。カスタマイズできるテンプレートやシェイプを形成する機能がついており、操作方法を習得すれば初心者でも比較的簡単にデザインを制作することが可能です。自由度の高いデザインができるため、ポスターや名刺といったページ数の少ない制作物に向いています。
Adobe Photoshop
Adobe Photoshop(アドビフォトショップ)は、Adobe社が提供している画像編集ツールです。写真や画像の加工から、色の調整、画像の合成、テキストの追加や装飾まで行えるため、絶妙な色味や質感を意識したデザインの制作が可能になります。Photoshopで加工した画像をIllustratorでレイアウト・編集するなど、両方のソフトを組み合わせて使用することも多いです。
QuarkXPress
QuarkXPress(クォークエクスプレス)は、Quark社が提供しているDTPソフトウェアです。InDesignが主流になる以前は、「DTPソフトと言えばQuarkXPress」と言われるほど圧倒的なシェアを誇っていました。ページレイアウトやグラフィック、Web・アプリ制作ができるアプリケーションとして、今でも根強い支持があります。
コミュニケーションスキル
DTPの仕事はさまざまな関係者とのやり取りが多く、要望通りのデザインを完成させるためにもコミュニケーションスキルが必要です。
たとえば、DTPデザイナーやDTPオペレーター同士の連携、ディレクターやカメラマン、ライターとのやり取りなど、さまざまな職種の人が関わって一つのデザインが完成します。クライアントの意図を汲み取るためにも、相手の視点に立った綿密なコミュニケーションが求められます。
DTPに関連する資格
DTPの仕事に就くために必須な資格はありませんが、以下の資格を保有していることで客観的にスキル・知識の証明が可能になります。
これからDTPの仕事に就きたい人や、キャリアアップを目指したい人はぜひ参考にしてみてください。
DTP検定
DTP検定は、DTPクリエイターのセンスと技術力を認定する資格として、ソフトウェアの知識や操作スキルなどを中心に問われます。
職種別に2つのコースが用意されており、企画・編集職や広報職向けには「DTPディレクション」、営業職や事務職をはじめとした全てのビジネスマン向けには「DTPビジネス」があります。このようにシチュエーション別に検定内容が異なるため、より実践的なスキルの証明につながると言えるでしょう。
DTPエキスパート
DTPエキスパートは、DTPの基礎知識を総合的に問われる資格であり、「DTP」「色」「印刷技術」「情報システム」「コミュニケーション」の5つのカテゴリーで構成されています。
試験は学科試験と実技試験に分かれており、学科試験の合格者は「DTPエキスパート」、学科試験と実技試験の合格者は「DTPエキスパート・マイスター」として認証されます。
DTPの仕事に向いている人
DTPの仕事は細かな作業を積み重ねていくため、黙々と作業を続けるのが苦にならない人が向いているでしょう。成果物の修正が効かないDTPでは、誤字・脱字や少しのズレが大きな問題となる可能性があります。そのため、細部まで目が行き届き、繊細な作業が得意な人にはピッタリの仕事と言えます。
また、基本的にはパソコン上で行う仕事ですが、デザイン完成までは各所とのやり取りが欠かせません。相手の要望を汲み取り、認識の齟齬を起こさないようなコミュニケーションスキルがある人も向いていると言えるでしょう。
DTPとは、紙媒体のデザインを円滑に行うための重要な仕事
従来は、印刷物を作成するにあたってデザインや版下の作成、製版や印刷などの工程をそれぞれの専任担当者が行っていました。DTPは、そんな紙媒体のデザイン・印刷における工数を大幅に減らし、効率化を実現させた仕事です。
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