終身雇用制度の崩壊や新型コロナウイルスの流行など、先行きが不透明な社会において重要視されているキャリア形成。キャリア形成とは、仕事に必要なスキルや強みを身につけていくことであり、理想の姿を実現するためには欠かせないプロセスです。
今回は、そんなキャリア形成の意味や必要な理由、キャリアを築くための考え方やキャリア形成の方法について解説します。
キャリア形成とは?
キャリア形成とは、個人が職務経験を通して職業能力を作り上げていくことです。人生で長い時間を費やす「仕事」を通じてスキルや経験を蓄積し、自己実現を図るための取り組みだとも言えます。
文部科学省が小・中・高等学校におけるキャリア教育を推進させるための「キャリア・パスポート*1」を導入したり、厚生労働省が無料でキャリアコンサルティングの提供を行う「キャリア形成・学び直し支援センター*2」を設置したりなど、近年では国もキャリア形成の支援に力を入れ始めています。
キャリアデザインとの違い
キャリアデザインとは、仕事における理想像や将来の目標に加え、プライベートも含めた人生設計を行うことです。結婚や育児、家族の介護など、自分自身に想定されるライフイベントと仕事とのバランスを考えながらライフプランを練っていきます。
キャリア形成は「仕事」を通じて自己の成長を図る取り組みのため、プライベートは含みません。キャリア形成が理想のキャリアを実現するために行う「取り組みそのもの」、キャリアデザインが仕事のみならず「人生全体の設計」を指している点が違いだと言えるでしょう。
キャリアプランとの違い
キャリアプランとは、プライベートを含まず仕事にフォーカスした具体的な計画(プラン)を立てることです。目指すキャリア像を実現させるために必要な経験やスキルを踏まえて、具体的に転職や独立、異動や昇進、学習などの計画を立てていきます。
「キャリアデザイン」を前提に「キャリアプラン」を考え、そのキャリアプランを実現するために行うのが「キャリア形成」というイメージを持つとわかりやすいでしょう。
キャリアパスとの違い
キャリアパスとは、個人が一つの企業内で成長や進展を実現するための道筋のことを指します。前述までの言葉はすべて「自分視点」のことでしたが、キャリアパスは企業側が社員に対して提示するものです。
一つの企業内で成長していくことを前提としているため、転職や独立などは含みません。キャリア形成を考えていくうえで、職場ではどのようなキャリアが描けるのかといったキャリアパスは、把握しておくべき重要な要素です。
キャリア形成が必要な理由
社会に出る前からキャリア教育を推進させるほど、近年でキャリア形成が重要視されている背景を見ていきましょう。
ここでは、キャリア形成が必要な理由として以下の3つを紹介します。
それぞれの理由について解説します。
終身雇用制度の崩壊
日本ではこれまで終身雇用制度が主流でしたが、近年は「終身雇用が崩壊した」と言われるほど多くの企業で制度が廃止されつつあります。そのため、一つの会社で働くことを前提にキャリアを考えるのではなく、個々人がどのようなスキルを身につけ、どのように働いていくのかを考える必要が出てきました。
消滅しつつある「企業に就職=安定」という考え方に依存しないためにも、自分の価値観や目標に沿って自主的にキャリア形成を行うことが重要なのです。
働き方の多様化
終身雇用制度の崩壊や少子高齢化の影響による労働力人口の減少といった社会情勢の変化により、働き方の多様化が進んでいます。転職や独立、副業や在宅ワークなどが一般的なものとなり、ライフスタイルに合わせた場所や環境で働くことが可能になりつつあります。
このように「仕事」に対する固定概念が変化していくなかで、自分の理想像や目標を実現させていくためには、早い段階でのキャリア形成が大切です。必要なスキルを計画的に身につけていくことで、多様化した働き方にも対応できるようになるでしょう。
テクノロジーの進化
AIやIoTなどのテクノロジーの進化により、さまざまな定型業務の代替が推進されています。テクノロジーの進化は、暮らしの利便性向上や仕事の効率化に役立っていますが、一方で「仕事がAIに代替される」といった雇用に影響を与えている側面もあります。
職種によっては、一定のスキルを身につけなければキャリアの継続が難しい場合も想定されるため、「自分にしかできない仕事」を意識しながら長期的な視点でキャリア形成を行う必要があるのです。
キャリアを築くための考え方
キャリア形成を行うにあたって、失敗を防ぐためにも事前に意識すべきポイントを押さえることが大切です。ここでは、理想のキャリアを築くための考え方として以下の3つを紹介します。
それぞれの考え方について、意識すべき点を見ていきましょう。
周囲と比較しない
キャリア形成を行ううえでは、周囲と比較せずに自分の価値観と向き合うことが大切です。周囲との比較ばかりを考えてしまうと、自分の状況に落ち込む可能性があるだけでなく、望んでいなかったキャリアを歩む恐れもあります。
たとえば、他の人がうまくいっている仕事や価値観を参考に自分の目標を決めることで、本音では興味のなかった仕事に就いてしまうかもしれません。あくまでも「自分のキャリア」として理想や目標を掲げ、自分のペースで実現に向けた行動をしましょう。
ポジティブに考える
キャリアについて真剣に考えるほど、「自分には無理かもしれない」とネガティブ思考に陥ってしまうこともあるでしょう。しかし自己実現に向けたキャリアを築くためには、ポジティブに考えるよう心がけることが大切です。
どのような出来事に対してもポジティブに捉えることでモチベーションが上がり、チャレンジ精神が向上したりアイデアが浮かびやすくなったり、結果としてキャリアの選択肢が広がることにつながるでしょう。
自分の現状を的確に把握することは大切ですが、補うべきスキルや経験に対してもポジティブに考え、新しい挑戦を楽しみながら進めていくことが重要です。
やりたくないことから考える
理想のキャリア像がなかなか思い浮かばない場合は、逆に「やりたくないこと」から考えてみましょう。また、同時に「なぜやりたくないのか」の理由を一つずつ考え、深掘りすることも有効です。
たとえば、「ノルマのある仕事はしたくない」のは「プレッシャーがあるとストレスに感じてやる気がなくなってしまうから」と具体的にやりたくないことについて考えれば、自然にどのような仕事がしたいのかがイメージしやすくなるでしょう。
キャリア形成の方法
最後に、キャリア形成の方法として以下の4ステップを紹介します。
理想のキャリアを実現するためには、ただ闇雲に行動せず、上記の手順に沿ってキャリア形成を進めていくことが大切です。順に見ていきましょう。
1.最終的になりたい姿を考える
まずはどのような社会人になり、どのような仕事をしているのかなど、最終的になりたい姿を考えます。この段階で具体的な理想像をイメージしておくことで、より具体的な計画を立てることが可能になります。
自分のなりたい姿が思い浮かばない人は、ロールモデルを見つけたり、以下の「WILL」「CAN」「MUST」に当てはめて考えたりしてみましょう。
- WILL:やりたいこと(志望性・夢)
- CAN:できること(強み・スキル)
- MUST:やるべきこと(周囲から求められている役割)
この3つに共通している点を認識することで、なりたい姿のヒントを見つけるのに役立ちます。
2.なりたい姿になるためのプランを立てる
なりたい姿が明確になったら、次に実現するためのプランを立てます。まずは自分のスキルや経験を棚卸しして、現状を把握したうえでゴールまでの道筋を考えましょう。
プランを立てる際は、ゴールから逆算して「〇〇年には転職をする」「〇月までには資格を取得する」といった目標を設定していくことが大切です。大きな目標を立てすぎずに、小さな目標を段階的に設定することで、モチベーションの維持や挫折の防止に役立つでしょう。
3.必要なスキルをリストアップする
目標達成に向けた具体的なプランを立てたら、そのプランを実行するために必要なスキルをリストアップします。必要なスキルには、業務上で必要となる専門的スキルの他にも、コミュニケーション力や課題解決力、自己研鑽力などのヒューマンスキルも含まれます。
自分のプランに必要なスキルは、書籍やインターネットを参考にし、一つずつ具体的に書き出していきましょう。できるだけ細かく書き出し整理することで、実際に取り組むべき内容が明確になります。
4.スキルを身につける方法を考える
必要なスキルをリストアップしたら、それぞれ身につける方法を考えて実行していきます。スキルを身につける方法として、以下の例が挙げられます。
- 資格の取得を目指す
- スクールや職業訓練に通う
- 研修や講座を受講する
- 裁量権の大きい仕事をする
どのくらいの期間やお金をかけて、どのくらいのレベルまで習得するのかを考えながら、適切な方法を見つけていきましょう。もし「思ったよりも時間がかかりそう」などの修正点があれば、再度プランから見直して適宜調整することが大切です。
キャリア形成とは、自己実現にもつながる取り組み
キャリア形成とは、キャリアプランの実現に必要なスキルや強みを身につけるプロセスのことを指し、何が起こり得るかわからない未来で後悔しないためにも重要な取り組みです。長い時間を費やす「仕事」に着目し、人生の満足度を上げるためにも、早い段階からキャリア形成について考え実行していきましょう。
また、効率的に必要なスキルを身につけるためには、スクールやキャリアコーチングなどを活用し、第三者の意見を取り入れることが大切です。女性向けキャリアスクールSHElikes(シーライクス)では、全45以上の豊富な職種スキルを学びながら、設定した目標に対して定期的に振り返りを行うコーチングも受けられます。
SHElikesで自分の目標に適したサービスを活用し、キャリア形成を進めてみてはいかがでしょうか。
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※参考
*1:文部科学省「「キャリア・パスポート」例示資料等について」より
*2:厚生労働省委託事業「キャリア形成・学び直し支援センター(キャリガク)」より